日本において、コールセンターを含むカスタマーサポートは、「コストセンター」としてコスト削減対象として捉えられる傾向があります。
売上貢献への可視化が非常に難しいカスタマーサポートですが、問い合わせを行うユーザーの多くは解約の可能性があるユーザーや申込み希望者であるため、実は解約防止やアップセル/クロスセルといった売上維持および/拡大に大きく貢献しています。
今回はチャットボットを活用することで、売上に繋がるアクションに注力し、「コストセンター」から「プロフィットセンター」へと変革を遂げた事例をご紹介します。
チャットボットの活用方法
カスタマーサポートツールの1つとして拡大している「チャットボット」の活用方法は、大きく分けて2つあります。
- コスト削減目的の利用(問い合わせ対応などのカスタマー領域)
- 売上拡大目的の利用(レストラン予約や商品購入などのマーケティング領域)
マーケティング領域での活用は、広告ツールや商品データベース、決済・予約ツールとの連携が重要となってくるため、現段階では売上拡大というよりも、応対自動化によるCX(カスタマーエクスペリエンス)の向上や改善に向けたカスタマーサポート領域での活用が期待されているようです。
参照:The 2018 state of chatbots Report
チャットボットの利点
ユーザーが感じているチャットボットの主な利点は、以下が挙げられます。
- 24時間利用できること
- すぐに返答があること
- 簡単な問合せに対応してくれること
- コミュニケーションが取りやすいこと
また、企業側としてもチャットボット導入により30%ほどコストを削減できると言われてます。
参照:(invesp, 2017)
当社の実績においても、チャットボットを導入により、これまで問い合わせせずに離反していたサイレントカスタマーの利用率が伸びたことでユーザー数が増加しており、コストを抑えつつもユーザーにとって最適なCXを提供することが出来るツールであることが分かります。
チャットボットの特性を活かした有人対応とのすみ分けが大切
コストセンターからプロフィットセンターへと変革するには、
大きく下記2点が必要です。
- 現状の対応フローの中で、売上に一番寄与するポイントを洗い出す
- 対応フローの中で自動化できるポイントをチャットボット化する
売上に寄与するポイントは、新規ユーザー向けの対応であれば購入・予約率やアップセル・クロスセル金額、既存ユーザー向けの対応であれば解約率などが挙げられるかと思います。
チャットボットによる自動応答化で有人対応のリソースを削減し、この注力ポイントにいかに有人対応のリソースを投入できるかがプロフィットセンターへの重要なポイントとなります。
【事例】エステ業界:予約と途中離脱者に絞ってリソースを投入
チャットボットを活用することで「攻め」の対応にオペレーターのリソースを割くことで、明確な成果が出たことで社内評価を得て、今までコストセンターだった位置づけから、利益を生み出すプロフィットセンターへと変革した事例をご紹介します。
課題
これまで電話やWebページからの問い合わせは、予約対応も含めほぼ全てオペレーターが対応していました。
ユーザー毎の悩みやプランなどの詳細ヒアリングに多くの時間を要してしまうため、オペレータ1人当たりの対応人数を増やすことはなかなか難しい上、予約の日程が合わないユーザーは「また後日連絡する」など、1対応では予約率の向上へと結びつけることができませんでした。
しかし、ユーザー1名単位の単価が数十万円とかなり高額なサービスのため、初回予約の導入率が事業として重要なポイントと考えており、今回チャットボット導入へと至りました。
解決策
問い合わせの導線をWebページからLINEへと切り替え、チャットボットを導入することで、これまでオペレーターが行っていた詳細ヒアリングの自動化を行いました。
オペレーターは、チャットボットのヒアリングをベースに最適なプランを提案することだけに集中ができ、かつオペレーター1人当たりの対応件数も増やすことが出来ました。
また、空いたリソースを活用して、チャットボットでヒアリング途中や日程が合わずに離脱したユーザーに対して、「近くの店舗で日程が空いておりますがいかがでしょうか?」などのフォローを実施することが可能になりました。
結果
チャットボットの導入により、予約率は85%→95%へと向上、かつ1人当たりの予約対応数も136% へと増加しました。
今では、更に人員配置を増やしており、1年前と比べて予約総数213%と驚異的な事業成長へと大きく貢献することができました。
まとめ
チャットボットというと対応自動化・コスト削減などに焦点を当てられることが多いですが、重要なのは空いたリソースを使ってどこに投資していくかです。
カスタマーサポートは重要なユーザー接点であるということを理解した上で、いかに売上という視点を持てるかが大切なポイントになります。
今回はエステ業界での事例をご紹介しましたが、単価が高いサービス(ヘルスケア・不動産・美容系等)は、チャットボットと有人対応を組み合わせたオペレーションは相性がいいと思います。
どのようなチャットボットの活用方法が適しているのか知りたいなど、気になることがありましたらお気軽にお問合せ下さい。
執筆:柾屋 利昭