近年、自動車の月額利用サービスや家電の月額利用サービスなど、サブスクリプション型のサービスの普及が広まり、”所有”から”利用”の社会への移行が加速しています。
サブスクリプション型の収益の約80%は既存顧客からもたらされるとも言われており、今後より一層顧客のファン化やロイヤル化が重要視され、カスタマーエクスペリエンスに対する取り組みへの注目が高まると考えられるでしょう。
カスタマーエクスペリエンス向上のポイント
- 最適な活用方法の特定 *本記事でご紹介
- チャットボット内で解決させる
- 有人とチャットボットの役割分担
最適な活用方法の特定
チャットボットの活用方法はFAQ対応だけではありません。
カスタマーエクスペリエンスを向上させ、かつ業務効率を大幅に改善するには、業務内容に合わせた最適なチャットボットの活用方法を選択する必要があります。
カスタマーエクスペリエンス向上に繋がる効果が得られた事例から、最適なチャットボットの活用方法をご紹介します。
①ゲームのデータ引き継ぎに特化させた活用事例
課題
- 対応に日数を要する「データ引き継ぎ」に関する問い合わせが大半を占めていた
- ユーザーにとって「データ引き継ぎ」の完了までに時間がかかる事は、サービスイメージの低下や離脱リスクが高まる可能性が高い
実施内容
- データ引き継ぎに必要なヒアリングをチャットボットへ置き換え
- ユーザー毎にヒアリング内容を変動させることでユーザーへの負担を軽減
スマートフォンゲームにおける問い合わせは、「機種変更時のゲームデータ引き継ぎ」に関する内容が非常に大きな割合を占めています。
しかし、データ引き継ぎを行うには、機種変更前のデータの特定や本人確認の必要があるため、ユーザーはゲームの運営側とのメールでのやり取りが何度も発生し、引き継ぎ完了までに2~3日程かかることもありました。
そこで、解決までの所要時間がサービス離脱に直結するほど重要、かつ問い合わせの大半を占める「データ引き継ぎ」に焦点を当て、これまでメールで行っていたユーザー情報のヒアリングを代替するチャットボットを適用しました。
カスタマーエクスペリエンス向上のポイント
ユーザー毎に保有している情報量が異なる為、本チャットボットでは一律で同様のヒアリングするのではなく、必要な情報が全て揃った時点でカスタマーサポート担当者へエスカレーションできる仕組みを導入。
これにより、情報量や正確性によってヒアリング項目や数を変動させ、ユーザー毎に必要最小限のやり取りで短時間で引き継ぎが完了できる設計にしました。
特化型チャットボットを導入した効果
- 【実績1】引き継ぎにかかるメール対応工数:25%削減
- 【実績2】引き継ぎ問い合わせUU数:50%増加
チャットボットによるヒアリング代行によってメールでの対応工数が削減されただけではなく、利便性の高さから、データ引き継ぎに関する問い合わせUU数が増加しました。
また、対応完了までの時間削減や好意的なユーザーボイス(Twitterでの高評価など)といった成果も得られています。
②課金率向上に特化させた活用事例
課題
- ロイヤルカスタマーの醸成
- 課金率の低下
実施内容
- 問い合わせ内容を分析
- 課金方法に特化したチャットボットを配置
無料サービス利用後、有料サービスの利用には至らず離脱してしまうユーザーが多く、課金率の向上を課題としていたあるオンラインサービスがあります。
ここで重要になるのが、問い合わせによって蓄積されたVOC(Voice of Customer)です。これまでの問い合わせ内容を分析したところ、実は課金方法に関する問い合わせが多いことが判明しました。
ここから、”課金をする意思があるがやり方が分からず、そのまま離脱してしまうユーザーが多く存在するのではないか”という仮説が立てられます。
この仮説に対する打ち手として、対象ページに課金方法の問い合わせに特化したチャットボットを配置しました。
カスタマーエクスペリエンス向上のポイント
- 対象ページに適したチャットボットを設計
- 問い合わせが多かった課金方法に対する回答を充実
特化型チャットボットを導入した効果
課金率が向上し、短期間で売上金額の増加を実現
まとめ
AIチャットボットを活用したカスタマーエクスペリエンスの向上には、
業務フローやカスタマージャーニーに合わせた”最適な活用方法”を選択することが重要
本記事では、「AIチャットボット導入におけるカスタマーエクスペリエンス向上のポイント」の第一弾として、AIチャットボットの最適な活用方法の特定が重要という点を事例を交えてご紹介しました。
残り2点のポイントに関しても、今後のコラム記事にて事例を交えてご紹介をさせていただきます。
執筆:田島 努