こんにちは!AI Shift 生成AIビジネス事業部で研修講師を担当している及川 信太郎(@cyber_oikawa)です。
この記事はAI Shift Advent Calendar 2024の17日目の記事です。
今回は、サービスとして提供している生成AIを使いこなすための研修について、約半年間研修を提供する中で考えた「面白い研修コンテンツの作り方」についてまとめます。
AI Shiftが提供している研修について
AI Shiftでは生成AIに関する研修を複数展開しています。
- 生成AI基礎 / 応用研修
- Dify研修
- Copilot研修
- 経営者向け研修
- 営業 / 人事 / マーケティング職向け研修
サイバーエージェントの99.6%が受講した「生成AI徹底理解リスキリング for Everyone」のエッセンスを元に、基礎的な研修からツール別 / 職種別で研修の社外向け展開を行っており、総受講者は数百名を超えています。
また、目まぐるしく変わる生成AI市場についての外部向けオンラインセミナーを随時展開しています。
研修全体の満足度平均は97%で、高い水準をキープしています。
今回は、研修満足度を高くキープし続ける研修コンテンツを作成するためのこだわりをご紹介したいと思います。
成功する研修の秘訣は「事前情報収集」にあり
研修の開催方法はいくつかのパターンがあります。
- 選抜者向け
- 特定の職種 / 部署向け
- 全社員向け
選抜者向けに募集する場合は、大体の場合がAIリテラシーが似通っているため、どのような内容を話せばいいのかも定められます。
しかし、職種 / 部署で募集する、全社員で募集する場合はAIリテラシーにバラつきがあります。
例えば、エンジニア職では生成AIツールを既に業務で使用しているケースが多い一方、営業職では活用方法が模索段階である場合が多いです。
「プロンプト」という言葉を聞いて完全に理解している方もいれば、聞いたことのない横文字にアレルギーが出てしまう方もいます。
そこで重要なのが、研修を作成する前に「事前情報収集をする」ということが非常に重要です。
- 生成AIの活用頻度はどれくらいか?
- どんな業務に生成AIを活用しているか?
- 活用において感じている課題は何か?
- どんなことを研修で知りたいか?
このような内容をアンケートで回収することで、参加者の方々の生成AIに関するリテラシーを把握することができます。
リテラシーはおおむね『上級者』『初心者』『混合』の3パターンに分かれます。
それぞれのリテラシーで意識しているポイントをお伝えします。
①上級者が多い場合
- 専門用語に関する説明は極力省く
- 既知の言葉である可能性が高く、自身で検索する手法も理解している場合が多い。
- 実践(手を動かしてプロンプトを作成したり、実装事例に触れる)の時間を多く設ける
- より自身の業務での活用イメージが沸く内容(プロンプト作成のワークショップや、自社データを使った具体的なAI活用シミュレーションなど)を取り入れる。
- 質疑応答の時間を多く取る
- 実践を通して、さらに自身の業務の身になる質問をしたい参加者が多いケースが多い。
②初心者が多い場合
- 専門用語には必ず説明と、分かりやすい例え話を入れる
- 例)「プロンプト」とは、生成AIにどのようなタスクを遂行してもらいたいかを決める「指示文」です。 プロンプトに入れる文言では曖昧な表現は避けて「新卒社員にイチから説明する」イメージで丁寧に記載しましょう。
- 実例の紹介時間を多く設ける
- 「これは自分の業務に近い使い方だ!」という気づきを多く取り入れる。
③混合の場合
- 内容は「初心者に合わせる」が鉄則
- リテラシーが高い参加者は「そんなこと知ってるよ」という内容があっても、高度な活用事例や質疑応答があれば自身の知りたい情報を取り入れることができます。 しかし、初心者にとっては、知らない言葉が1つ出てくるだけで理解が追いつかなくなり、その後の理解が難しくなるケースが往々にしてあります。 そのため「内容は初心者に合わせる」を徹底して行うことで、結果的に全体の満足度を上げることができます。
- 期待値を合わせる
- 例えば初心者向けの内容にする場合「今回は初心者向けの内容になっています。上級者の方には復習のつもりで、周りの方もサポートしてあげてください」と事前に伝えたり、ワークショップなどを実施する場合は上級者向けにより高いお題を伝える、応用的な活用方法を個別でお伝えすることで期待値を合わせつつ、初心者・上級者両方に満足度が高くなるような内容設計が効果的です。
- 質疑応答のハードルを下げる
- 質疑応答の例を出す
- 「そもそもプロンプトってなんですか?という質問でも構いません!」というような、質問のハードルを下げる事例を出すことが有効的です。
- ファーストフックを作る
- 参加者が多い場合、一番最初に質問をする方はとても緊張すると思います。そのため、運営側のメンバーに1問目の質問を振ったりする「ファーストフック」を作ることで、その後の質問が続きやすくなります。
- 質疑応答の例を出す
座学と実践の黄金比
研修は概ね座学が中心で、3~4時間のケースが多いと思います。
しかし、一般的に大人の集中力の持続時間は50分と言われています。50分と言えど、人の話を50分聞き続けるというのは、よっぽど興味のあるコンテンツでなければ持続することは難しいです。
研修においても同じことが言えます。その全てが講師の話を聞きっぱなしでは、その後自身の業務で生成AIを使いこなすレベルまで到達するのは難しいです。
ここで研修時には「座学:実践=3:1」を意識しています。
例えばプロンプトを紹介したら試す時間を取る、どんな活用を行いたいか資料にアウトプットしてもらうなど、座学の後に実践を必ず加えることで、より知識が定着しやすくなります。
この比率を重視し始めてから、高満足度をキープし続けることができています。
また、午後一番(13時ごろ)から研修を開始する場合、昼食後で集中力が長く保たない場合が多いため、最初にグループディスカッションを行うなどのインタラクティブな実践を行うことも効果的です。
勉強においては授業の後の小テストを実施することで知識が定着するように、座学の後には実践を組み込むことで集中力を高く保って研修に参加いただくことができると思います。
満足度97%を実現するフィードバックループ
研修では振り返りが非常に重要で、研修後のアンケートにご協力いただくことを重視しています。
- 勉強になった内容はどこか
- 既知の情報はどこだったか
- 社内に同内容をお勧めしたいと思ったか
- どんな内容を実践したいと思ったか
- 他にどんなことを知りたいか
このような内容を元に、例えば勉強になった内容で多かったものは事例等を加えて深く説明する、既知の情報が多いものは削除するなどのコンテンツのブラッシュアップをすることができます。
また、研修内容を録画してチームメンバー / 自身で見直すことも有効的です。
- 時間配分は問題ないか
- 話すスピードは早すぎないか
- 「えーと」「あのー」などのフィラーワードを多用していないか
- 休憩のタイミングは適切か(参加者が疲れてきていないか)
こういった講師の話し方などは、アンケートでは見えにくいため自身で見直すことで、次回以降の研修に活かすことができます。
最後に
生成AIを取り巻く市場は日々変化しており、研修実施者もその変化に対応していく必要があります。
私自身まだまだ勉強不足ではありますが、来年以降も質の高い研修を提供していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!